松本市は最近
地震が多いです
そもそも日本は
太平洋プレートやら
複数のプレートの上にある
世界でも稀に見る地震大国
地理の授業で
そう習いましたが
そうたくさん地震があるなんて
冗談じゃない
そんな話をすると
近所の居酒屋の主人は
地層断層の話を延々と
続けます
お料理は美味しいのに
この話が全く要点を得ず
とてもわかりづらいので
自身の目で確かめるべく
行ってまいりました。
松本は見事に
糸魚川静岡構造線の上に立ち
松本で生活する以上
そして居酒屋の主人の理解不明な
地層断層トークを切り抜ける以上
避けては通れぬ関所
コロナの影響で
しばらく閉館を余儀なくされ
開館したかと思いきや
入館できるのは
新潟県民オンリー
失礼ですが
新潟県民でも来ないだろうという
中々辺鄙な場所に
7月現在
ようやく他県の民にも入館許可がおり
このステージをクリアすれば
断層を
フォッサマグナを語れる
期待を胸に入館
糸魚川は
それはそれはたくさんの
珍しい石
特に翡翠が採掘されるようで
綺麗な翡翠のラインナップが
まずはお出迎え
続いて
著名な石マニアが集めた
翡翠のオンパレード
さらに翡翠以外の
なんとか岩みたいな
名前も覚えられない石の
鎮座されること
渋谷スクランブル交差点の
群衆の如し
おい
断層はいずこに
いずこに
だんだん不安になってまいりました
フォッサマグナのできかた
みたいなVTRが途中流れましたが
後半も
石石石石石
珍石ミュージアムに
改名した方が良いのでは
覚えが悪く
フォッサマグナってなんだろう
という副読本を購入し
ミュージアムを後に
なかなかの商売上手
糸魚川駅近く
昼間から赤提灯つきっぱなしの
某居酒屋へ入店
奥歯だけがまばらに存在し
物を咀嚼するために必要であろう
主要な歯が抜け落ちている店主
田舎町の農協職員のような面構えのバイト
やたら近隣の風俗店を紹介したがる常連
ここ糸魚川も
役者はだいぶ揃っています
歯抜け店主「刺身がオススメ!うちほんとにやすいから」
5切れずつ4点の刺身盛り合わせ
1000円
さすが港町
安い
甘エビ ブリ 赤身
あと一つ
白身の正体が何かわからない
往々にして白身は
わかりづらいもんですが
「大将、この白身はなんですか?」
歯抜け店主「なんだろなー?タイかな」
農協バイト「タイじゃないでしょうねー、ヒラメかな」
風俗常連「いやカレイじゃないか、色が」
私の刺し盛りに
だいぶ至近距離まで
三人の額が近づいてくる
いや
貴兄達は
なぜこの白身の正体を知らぬ
歯抜け店主「タイにしておきましょう!」
白身の魚を食べ分けられる
美味しんぼの主人公ばりの
舌の精度はない為
タイと念じ美味しく頂きました
続いてブリに箸を伸ばした瞬間
歯抜け店主「それはブリだよにいちゃん!」
それは存じております
なんというドヤ顔なんだ
幻か
ドヤ顔すぎて
歯が生えて見える
歯抜け店主「もうあがっていいぞ、〇〇君」
農協バイト「ありがとうございます」
まだ夕日も沈まぬ夕刻
もう上がりなのか
いそいそと退散するバイトの若君
風俗常連 「もうあがるのか」
歯抜け店主「彼、バイト掛け持ちなんだ」
常連「ここだけじゃだめなんか?」
店主「もう一つやらんとだめらしいよ」
常連「見上げたもんだ!」
店主「次も居酒屋らしいんだがバイト代安いみたいだよ」
常連「でもなんでそんなにお金が必要なんか、姉ちゃん遊びか?」
店主「ちがうよ。彼高齢のお婆ちゃんがいるんだよ。老人ホーム入っててさ」
常連「彼が面倒を?」
店主「老人ホームとか、毎月高いんだろ。お婆ちゃんの年金だけじゃ到底無理みたいでさ」
常連「偉いな…」
店主「俺ももっと時給あげてやりたいんだが、コロナだなんだで厳しいんだわ」
ようやく夕日が沈んで参りました
糸魚川駅は少し歩くと
すぐ海岸線が拝め
その夕日たるや日ノ本一の絶景とか
バイトの若君は
仕事があがる直前
そう自慢げに
私に話してくれました
夕日の美しさがわかる感受性
お祖母様を大切にされる
まるで
何億年とかけて
磨かれた
翡翠のように美しい心
あのような柔和な表情は
そこから来るのか
酒ばかり呑んだくれ
親孝行の一つらしない自らを
恥じました
若君
この白身の件
タイだろうがヒラメだろうが
はたまた聞いたことない
深海魚だろうが
なんだっていい
今回の旅路
断層の知識以上に
大切な何かを
糸魚川にて教わりました