オリンピックが終わりました。
陸上男子100m決勝を見て
思い出すこと
私はもっと
とんでもない脚力を持つ
スプリンターを知っているということ
こんな事態になる前の遠い昔の話
降りるべきで降りれず
寝過ごした結果到着した駅
寝過ごして不時着した
ということは
この地に来た事に
何か意味がある
天命であるということ
寝過ごしたことに絶望せぬ為に
私はそう理解する様に
心がけております。
駅から歩くこと数分
おそらく古河の最高峰であろう
盛り場
「東十番街」
そこにある
きっとこの古河の今昔を
何十年にもわたって
見守り続けたであろう
クラシカルな
一軒のスナックがあります
初老の男性が1人切り盛り
全盛であった経営時の
繁盛具合が偲ばれる写真の数々
5年前の日付で止まったままのカレンダー
城下町のナポレオンと
書かれた段ボール
下町にナポレオンがいることは承知だが
城下町にもナポレオンはいるのか
それはどうやら
群馬県は館林の酒らしい
初老の大将は
桐生のご出身
巨大な桐生第一高校の野球グラウンド
篠原涼子の出生
ニューイヤー駅伝の鬼門赤城おろし
私の中の持てる全ての桐生を総動員して
臨む大将との会話
私と大将
2人だけの空間
のはず
おかしい
視線を感じる
誰だ
背後か?
違う
正面に見える車の模型
なんだろう
一昔前の
暗がりでわからない
お通しと言われて出てきた
大量の野菜とウインナー
大将は
このブランドの
ウインナーしか買わないと豪語
歯応え
ジューシーさ
そしてそのうまい食べ方を
ウインナーのCMで
ウインナーを愛でる
田崎真也のように
とうとうと語る大将
「大将、群馬のウインナーで?」
「駅ビルのニュークイックですわ」
感じる
ニュークイックという単語が
出たこの瞬間に
感じる
奴はすぐそこまできていました
古河の闇夜に溶けるその
メタリックブラック
いくつもの修羅場を掻い潜ってきた
筋肉流々の脚
そのコードネームは
G
そう
ゴキブリ
食べ終えたあとの空の皿
おそらく
ウインナーの油とマヨネーズが
溶けて液化されたその
オアシスを
奴は
虎視眈々と狙っている
奴は
調味料と調味料が並ぶ
受け皿上のデッドスペースを生かして
その身を隠しながら
私の目線が外れる瞬間を
息を潜め待っている
棚にある
常連がキープしている
花山とかかれたラベルへ
目線をあげる
「花山、ですか。桜の名所ですね」
「よくご存知で。これも館林の酒です」
目線を戻す
来ている
Gの位置は私の取り皿後方
80mmをきった
「花山公園、桜の名所」
「は」を口から発する
Gは動かない
井森美幸師匠に
いつか
お会いできるかもしれない
その日までに
覚えてしまおうと買った
師匠
まだ私は
いろはにほへと
以上
他は全く
覚えていません。
目線を再度外し、
上空を見つめ
「にほんで最初の富岡製糸」
上毛かるたの「に」
目線を落とす
来た
もう50mmもない
九畳一間の小さな飲み屋
窓の下には神田川
棚の上にはゴキジェット
もはや外装が錆びすぎて不発弾のようだ
使った瞬間破裂し
我々が退治されてしまう
あれは当てにできない
もう少しGを近づけて
肉弾戦に持ち込むしかない
「伊香保温泉、天下の名湯!!」
目線を外し
最終奥義、上毛かるたの「い」
叫んだその瞬間
後方僅か20mmに迫ったところで
「大将、G襲来!!」
「ガッテン承知!!」
大将丸腰では
違う
懐刀
「広報古河」を丸め
その宿敵めがけ
一刀両断
「なめるな、二足歩行の下等生物共よ」
そう嘲笑うかのように
Gは我々が入り込む余地もない
書籍と古新聞の間に
己の六肢を
余すことなく駆使して
逃げ込んでいきました
「うぬめ、何処じゃ!!」
「大将背後!」
「うらぁ!」
Gの俊敏が勝る
Gは軒並みそびえる常連ボトルを越え
Gは謎の車の模型を越え
Gは、、
あの模型の正体は
違う
あれは、、
G戦場のハリアー
車道を走るハリアーを見て
思い出すこと
あのGはまだ現役で
戦場を走り回っているのだろうか
また古河の地で
城下町のナポレオンを飲みながら
一戦お手合わせ願いたい