レバニラの行方II

違う




火を見るより明らかに違う













埼玉は大宮駅近くの





真っ昼間から大先輩たちが




訝しげな顔をしながら酒を煽る






大衆酒場










瓶ビールとレバニラを頼む







瓶ビールより





レバニラが先に出てきた











そんな番狂わせあるのか








紅白歌合戦








きゃりーぱみゅぱみゅよりも先に






石川さゆりが出てくる










そんな番狂わせあるのか










その時点で疑うべきだった








老齢の女性店員が持ってきた



そのレバニラ













レバーがない







肉はある






けどレバーではない












明らかに違う





紛れもなく














豚こま肉だ










いくら私が色弱だとしても





いくら私の舌の精度が




ファミレスの


若いバイトが繰り出す






接触温度計より悪くても







わかる







豚こま肉だ









その皿を置き



老齢の女性は





厨房へそそくさと消える








奴はくノ一だったのか












レバーと豚こま肉









全然違う















倖田來未江沢民くらい違う












レゴブロックとベンザブロックくらい違う











千種と乳房くらい違う














いや、待て






埼玉ではこれがレバーなのか






私が近視眼的に物事を




捉えているのではないか








常識とは誰かの非常識






破壊無くして創造無し






能書きを垂れず






ここは一口いただこうではないか













箸を伸ばし、口へ投入






舌触り





喉越し







鼻腔を抜ける香り











その全てを持ってして















紛れもない














豚こま肉だ















レバニラと書かれた






タバコのヤニまみれになった




メニュー札に












夕暮れの街の中に




どんどん小さくなる





思いびとの背中を見つめるような






そんなセンチメンタルな





視線を向けていると



















くノ一老婆が登場








その手に持ったその皿こそ














レバニラ










明らかな誤配膳だ









老婆へ必死の猛アピール








ロスタイムのゴール手前で






相手ファウルを主張する





大宮アルディージャの選手を凌駕する











猛アピール









「あ、先に野菜炒めきたのね、そう」










レバニラを持って厨房へ帰る老婆















もはや




レッドカード確定の





学生審判でも裁ける反則を









取ってもらえなかった

















このくノ一老婆





全く話が通じない








くノ一を通り越して







異国人だったのか











くノ一で異国人








アンナ・チャップマンか
















「気の毒ですね、、どうぞ」





隣に座っていた




この店では珍しい



若いカップルから



レバニラを



お裾分けしていただきました













レバニラミスオーダーが繋いだご縁









日をまた改めそのカップルと







南越谷で



レバニラを食べることになりました