三者凡退

私の大学時代の後輩に




蛾のように舞い

虻のように刺す


自称「下赤塚最強のナンパ師」






本人の名誉もありますので


名前を

タカハシ君(ほぼ実名)



というものがおります。



ここ数年
勝率がめっぽう上がらない私は
そんな下赤塚の先人の教えを請いに







板橋区
下赤塚までハイヤーを走らせました






有楽町線下赤塚駅

「和民」にたたずむ
どこかうだつの上がらない
先人がぽつり一言








「就職が決まらない」





タカハシ君も大学4年生



その湯葉1枚にも満たない
薄っぺらトーク



精進期間
足掛け3浪というレコードも相まって






日本経済市場は
「下赤塚最強のナンパ師」に
受難を示しているようです。











「今夜は下赤塚を震撼させる」






もはや彼の言葉に何の説得力もありません。




そんなタカハシ君のメンタルから
成果が出るはずもなく




立ちんぼフィリピン人10人斬りですら惨敗






最後の強硬手段
クローズ直前の午前4時



一同
「歌うんだ村 下赤塚店」
にゲリラ入店





店員「もう閉店ですが」

タカハシ君「かまわん。今夜は歌を歌うことが目的ではない」




店員との最低限のコミュニケーションも崩壊





部屋に入るなり
インターホン越しに

テキーラロックを二つ」

と必要以上にシャウト






テキーラを持ってきたカワイイ女子店員を口説く」

テキーラロック…なんてロッカーな人なお方…と思わせたら勝ちだ」



と熱弁をふるいながら
Xのラスティネイルを一人熱唱




「お待たせしました。テキーラロックです」







扉から出てきたのは
午前4時でもう顔から死相すらうかがえる
メガネ男子









タカハシ君

ラスティネイルのサビを歌うのやめ






「話が違う」

とシャウト





「アゲインだ」


と2度目のテキーラロック注文










「お待たせしました。テキーラロックです」



またもや顔こそ違えど
メガネ男子登場





「そんなもの待ってない」

とシャウト



2死ランナーなし

「もう堪忍袋の緒が切れた。帰る」





勢いよく店を飛び出したタカハシ君


後を追っかける私

















「彼女!俺のマイクでシングしてくれ!」






とおおよそ
スナック帰りの
40代女性3人組に




シャウト







「おまえ鳥目か」

と後ろから
汚いドロップキックをかまし

試合終了










三振

三振

ぼてぼて内野ゴロにて





三者凡退







下赤塚の破天荒ロッカー
タカハシ君


最後にポツリ












「俺…大学院行くわ」



まず

彼に必要なのは





「教育」

なのかもしれません




午前5時の
下赤塚駅前交差点




彼の背には

往年の彼の輝きを現わすような

朝日が写っていました




その輝きが

いつかまた

ゆるぎない
自信となって
宿るようにと祈願し







「絶対内定 2011」を渡し


下赤塚を後にしました。








次回







「戦々恐々」
をお送りします。