暗中模索


「市境の長い橋を抜けると厚木サティの地下階段であった」



川端康成 「雪国」より一部抜粋








先週起きた涙涙の珍事



町田で酒を飲み



大和トンネルだけでなく

小仏トンネルが必然的に渋滞するのと同様








必然的に

私は終電を失くし


ハイヤーで厚木に帰りました。











乗り込んだハイヤーに行き先を告げたのが最後

私の記憶は闇へ葬られ





はたと眼が覚めるとそこは




ほの暗い闇の中




「まさかここが…厚木に潜む…アナザーワールド…」



恐怖から漏れた私の一言







背後に悪寒を感じ

迫る巨悪を確認すべく

恐る恐る振り返ると








灰色のシャッターに書きなぐられた










「厚木サティ」






という文字







背後ではなく
巨悪は足元に潜んでいました






「鞄がない」



打ちひしがれる警備員に


「鞄がない」



ションベンを終えて間もないバス運転手に


「鞄がない」


本厚木駅前交番の佐々木巡査に


「鞄がない」



厚木アナザーワールドで目が覚めてから
2時間


私が発した単語はこの


「鞄がない」


のみ





そこへ厚木営業所のナイスガイから


「お前の鞄を拾った賢人がいる」


との連絡



賢人に会いに行くと


賢人は厚木サティで
私の鞄を抱え
賢人らしからぬ
大きなあくびをしていました。






「賢人様、何かお礼を」


「いいよ別に」


「そんなこと言わず金なら腐るほど…」









ない






腐るほどあった金が一銭も






ない






「と思いましたが賢人…鞄の中の財布が…」


「いや俺とってねえよ」




賢人が


妻夫木聡ばりの




悪人


に化けた瞬間でした






クレジットカード



保険証




若き日のりりしい私が写る免許証





ウインズ錦糸町
CR花の慶次から授かった
現金うん万








お下品なビデオが
たくさんタダで借りれるくらい
ポイントがたまっていた
Tポイントカード







その全てが




厚木アナザーワールド









葬られました











♪誰より遠くへ





夢ならば醒めてくれ




このサティの向こうへ











ユーキャンシー(厚木)アナザワールド














次週





三者凡退」



をお送りします。