地域調査

私は大学在学中




都市社会学という学問を専攻しておりました。










昼から酒を煽りながら講義に参加






卒業論文


「東京都中野の飲み屋の都市社会学」という



アカデミックなタイトルにしてはみたものの










内容はただの中野飲み歩きマップ8枚程度で見事単位取得













しかし当時の教授は









そんなクズ学生である私に






とても寛大で







私の自由奔放な発言や奇行を






全て受け止めてくれました。










未だに頭が上がりません。













教授






社会人になった今でも




教授がおっしゃっていた





「都市社会学は実地調査が全て」




という精神を忘れておりません。










講義でおっしゃっていた




「地域社会におけるコミュニティの形成と発達」









当時は英語の参考文献ばかりで





1行たりともまともに目を通しませんでしたが






実地調査へのモチベーションは人一倍強く









実地調査という体で






よくゼミ飲み会を開かせて頂きました。















話がそれましたが









「地域社会におけるコミュニティの形成と発達」






をこの度




神奈川県平塚市をターゲットにし





私単独で調査に行ってまいりました。












以下









その調査報告をさせていただきます。




















場所は平塚市のとある公民館









営業の仕事で得た人脈を生かし






今回は





平塚市で密かに行われている市井活動







「それいけ平塚ウクレレ教室」




へ潜入調査をしてまいりました。












4月14日 13:30







定刻通り 公民館に到着








事務所に管理人1名のみという激緩ガードを突破し



2階へ潜入成功








昼間だというのに





なぜこんなほの暗いのか





早速単独で来たことへの後悔に苛まれていると

















「ようこそ!!」








奥から私の営業のお客様であるミスターが満面の笑みで登場
(以下ウクレレお師匠)










ウクレレお師匠は齢60代 






しかしその齢から想像もできない





巧みなトークと電気配線技術と音楽の才を持ち合わせた好々爺








「ほんとに来たのね!!」








またさらに横から師匠の奥様も登場






席に座るや否や




妙に適温なお茶を差しだされる












ウクレレたくさん持ってきましたから好きに弾いてください」



確かに机の上には大量のウクレレが散々している





御茶ノ水の変な楽器店よりも





今この場に存在しているウクレレの方が数は多いのではないか















「よくこんな後期高齢者の集まりにいらっしゃいましたね。」






そうおっしゃっていたのは


薬指と小指につけたマリンブルーのトルコ石
の指輪がこれでもかと輝かしいお婆様

(以下デヴィ氏と命名。最後まで名前が覚えられませんでした。すいません。)




















「やだ!私は前期高齢者よ!!」





そうおっしゃるのは




そのままウクレレ弾いたら

絶対邪魔だろうと指摘せざるを得ない

でかい石を搭載した指輪を小指つけたお婆様

(以下ステラ氏と命名ステラおばさんのクッキーのステラおばさんに似ていたため)













「頼むよ!お手柔らかに頼むよ〜」







決して私はまだ何も仕出かそうとしてはいない。
なのに私の一挙手一投足をこれでもかと注視するダンディなお爺様
(以下フリーマン氏と命名。自由人という意味ではなくモーガンフリーマンにどこか似ていたため)















「…君は楽器…何をやっていたんだね」







ギター片手に口数こそは少ないもののその雰囲気たるやとんでもないテクニックを持ってるに違いないと思わざるを得ないお爺様

(以下しげる氏と命名。抜粋はもちろん泉谷しげる。ただし彼だけがなぜウクレレを一切弾かずギターなのかは最後まで疑問が解消されず)










「ほんとはあと一人来られる予定だったんですが…旦那さんが脳溢血で、その看病でウクレレどころではないんですよ…ははは…は…」








ウクレレお師匠










師匠














全然笑えませんよ


















私を含めた計7名が












今この広大な平塚市






小さな小さな公民館で



日曜の昼下がり




お茶をすすり





豆大福を食べながら







ウクレレを弾いている











「それじゃ皆さん、スターダストを折角来てくれたお客さまに弾いてさしあげましょうよ」







ウクレレお師匠









「え〜もう忘れちゃった」
とステラ氏









「そうだ、○○さんお茶もう一杯」
とフリーマン氏







師匠の提案が全くもって全員に受諾されない












それでも紆余曲折を得て1曲披露していただく








確かに




どこか不協和音こそあったものの









改めてちゃんと聞くと





ウクレレの音色は








なんて







こころに沁みるのだろうか












当初の目的を忘れ








私は





この美しい音色の



虜になっていた









「ではもう一曲…テネシーワルツはご存じですか?」




と師匠









「いえ…」








「彼若いから無理も無いわよ。美空ひばり進駐軍に歌っていた歌なのよ」
とデヴィ氏





「なるほど…」







師匠の持っていたウクレレの楽譜を拝見







確かに…







楽譜から



ほぼ曲名とリズムが頭の中で





一致しない







「どうだ…知らないことばかりだろ。いい勉強になるな。」
とことん渋いしげる









「はい…勉強させていただきます」










そして









気がつけば














月二回の「それゆけ平塚ウクレレ教室」に入会








月謝2000円で



ウクレレを弾きながらお茶飲み放題 豆大福食べ放題







「次回までにはぜひ弾けるようになってください」








と師匠から立派なウクレレ


チューニングメーターと






譜面「ふるさと」をお借りする





















何の因果か








今私は









必死で










自宅にてウクレレの練習をしています。













普段使わない指がとても痛いですが









当面の夢は







茅ヶ崎、藤沢、鎌倉の







湘南エリアで






海を見ながら







加山雄三









「海 その愛」を弾き語りすること












人と人との繋がり








そして







その温かさに触れられた日曜の昼下がり














クソ学生時代









卒業式で







社会人生活への抱負が


全く語れなかった私ですが









営業







という仕事も悪くないですね…教授…