白い彗星



35にしてお釈迦様は




悟りを開き仏陀となり







35にして源頼朝





打倒平氏を掲げ伊豆から挙兵し







35にして女優、島崎和歌子





自身の等身大抱き枕を発売











私も齢35を迎え






ひとつの岐路にたたされています。












私の体は





白濁したある液体が秘めた





そのパワーによって







吉原遊郭浅草寺の間にある








狭い市民公園の





狭い個室のトイレで





うめき声をあげている。























バリウムという名の




白濁した液体








35歳にして




初めてその液体との対峙を迎え





勝利宣言を高らかに上げた





その




わずか数時間後












かつてない敵襲(便意)が






私のエスケープポッド(肛門)を






攻め立てる










ただひたすら自身の足で




浅草は浅草寺を目指す道中








北千住は旧日光街道




南千住は泪橋





山谷はドヤ街の喧騒を越えて





吉原遊郭見返り柳





襲い掛かる






数多の誘惑を振り抜けきった









浅草寺




まさに目前









エマージェンシーコールが





私の大腸に鳴り響く









勝ち戦と思われたこの勝負







まさかの急転直下











近くに灯りを灯す








若草色と



白のコントラストが鮮やかな



商家(セブンイレブン



に駆け込み





あくまで冷静を装い











「軒先の小僧や、厠を貸してはくれぬか」







「へい旦那!!あちきの店に厠はないでやんす!」










小僧よ



よき威勢だ







しかし、それは





厠を持たぬ者の威勢ではない












「な、、、、ぬっ」













この一文字を発したその瞬間






敵襲は私のエスケープポッドを破り





布製ATフィールド(ボクサーパンツ)へ










飛散






「こっ、、、小僧、、やりおったな、、」






「ひ、、ひっー、、、」







軒先から坊主が逃げ出す






布製ATフィールドに



飛散してしまっては




大股では歩けない








般若のような人相になった私は






交差点を






見世物小屋のペンギンのような歩みで





対岸の





酒問屋に向かう










「番頭さん、、厠を貸してはもらえぬか」







「だ、、旦那、、、厠はあちきの店にはねぇもんで、、、この通りの辻を一本二本三本四本五本目で左に曲がったその先に広場がございまして、そこになんとも大きな厠がございます」









果てしなき厠への道のりを






丁寧に説明してくれる番頭








しかしこの街の民は






なぜこうも厠をもたぬ







自身のその糞は




近くを流るる







春のうららの



隅田川




投げ捨てているのだろうか








厠の大きさなどどうでもいい






小さくても





この敵襲から逃れられればそれだけで







「かたじけな、、、」






















を発したその瞬間






襲い掛かる敵襲第二波






もはや布製ATフィールドでは






防ぎきれず






突破








常識と非常識の


ラストバリア(お気に入りのスーツ)へ












飛散









五本目の辻は遥かかなた








ラストバリアを




突破され







この平穏な




昼下りの市井







浅草





この街に噴射





それだけは防がねば











さらに大股で歩けなくなった私は







カジノ法案投票の山本太郎議員のような






牛歩で





五本目の辻を目指しました。

















私は今








狭い市民公園の




狭い個室のトイレで





うめき声をあげている














三回目の敵襲で






個室内に飛散した夢の跡









もはや





拭く気力もない








白い彗星の仕業か






右半身に




疱疹が出始めた








まだなお敵襲は止まず






便器から腰が上がらない











「お父さん!お父さん!このトイレ開かないよ!まだ人がいるのかな?」







外から聞こえる幼子の声






「たいちゃん、よそいこうね」






ただならぬ危険を察知した父親の声















たいちゃん、







すまない、、













来年は胃カメラにします