泰国大使

先週


大型で強い台風6号が本州を直撃






小笠原諸島を北北東に進路を取るも





関東本土を外れ
我々は一難を避けることができた





過ぎ去った台風の記憶は


私の脳裏からも一過するはず




であったが














私の元に


新たな台風の上陸を予感させる




一本の連絡が入る





















「弊社タイ国の営業所から現地日本人の大使と、タイ国の営業マンが来日します。自宅をきれいにし、受け入れる体勢を整えてください」















その連絡からわずか一週間後










千葉県は
八千代市
私の祖父の家に前泊





それでも朝六時に起床をし

私と愉快なスラリ長身同期君は








進路を北北西に





京葉道路をただひたすら




北北西に舵をきっていた。










車内には大音量で流れる








映画パイレーツオブカリビアンのテーマ






「君こそが海賊」







いや













「我らこそが海賊」







二人の士気は成田に着く頃には
最高潮に達していた。





全ては




ある一つのミッションを



成し遂げるために…






















厚木営業所おもてなし企画第一弾





「厚木営業所のナイスガイと行く 古き良き大江戸名所巡り
〜FA(ファクトリーオートメーション)は世界を結びます〜」








以下











ダイジェストバージョンでお楽しみください








7:50

京葉道路成田インター着




成田空港 入港検査
大音量で流れる






「君こそが海賊」




千葉県警
職質が車内に緊張感を走らせる




「おはようございます。入港の目的は?」


「要人の出迎えです」



「トランクのお荷物確認させて頂きます」




後部座席には

朝食

東京スポーツ



要人御用達のたばこ

キャビンスーパーマイルド




大使方を迎えうるために



寝ずに用意した











ジャックスパロウ変身グッズ








まずい










我々二人が海賊であることがバレてしまう









車内にまたも緊張感が走るも










「ありがとうございました!おきをつけて行ってらっしゃい」





入港検査を無事クリアし
安堵の笑顔が二人から溢れる。









しかし






千葉県警はおおよそ察知できなかったであろう。







私の目はすでに


要人を迎える




ジャックスパロウの鋭い眼光が宿っていたことを






8:00





成田空港第一ターミナル

南ゲート入国口に到着

サングラスに髭を蓄え



海賊帽
ドンキホーテ厚木店 探偵なりきりハット ¥1980)


を被り




蝶ネクタイ




という






微塵も
ジャックスパロウを
彷彿とさせない出で立ちで大使を待つ。




8:30


大使達全く姿を現わさず。


隣で
誰かを待つ青い目をした

パツキンボイン外国人からの


「ユーアーナイスルック」
の一言にどこか安堵感を覚える。






9:00


大使1名、タイ国営業マン2名到着

「サワディーカップー!!(タイ語でこんにちは)」

昨日練習した
タイ語を全力でシャウトするも



私の出で立ちを一瞥した瞬間




お三名方の表情に




「不信」の2文字が垣間見える。





9:30




諸手続きを終え
一路スケジューリング通り


外国人が喜ぶであろうという
安直な発想のもと選んだ観光スポット


「築地」

へ舵を取る





9:40



無限リピートで流し続けた



「君こそが海賊」



タイ国営業マンたっての


「日本のラジオを聞きたい」
というご要望につき


BGMを

J−WAVEへ変更




9:50



「日曜日の築地がゴーストタウンと化している」



と堂々と遅刻を試み、
築地入りを既にしている


クソガイ同期から連絡が入る。




大使と相談のもと
舵を築地から浅草へ切りなおす。




10:30


浅草着


浅草寺への参道に興奮冷めやらぬ
タイ国営業マン2名




出店で必死に万華鏡の営業を仕掛けてくる
オバン店員



「え?こっちは日本人なの?タイ人の兄弟かと思った!」


とタイ人営業マンと
日本人大使を見間違え



驚愕の表情を全く隠さず叫び続ける

オバン店員に


エセジャックスパロウ

自ら


地獄突きをかます






12:00



ランチタイム


浅草寺近くの焼き鳥屋に入る



一つ一つを肉を
ゆっくり噛みしめ
巧みに英語で感想を述べる
タイ人営業マン2名




その味が本当に
口にあったのかどうかは
未だに不明







焼き鳥に目を奪われている

タイ人営業マンの
すきを盗み

スラリ長身同期が逃走










13:00






一同
舵を江戸城に取る





楠正成像を眺め

あまり興奮の表情が見てとれない
タイ人営業マンを察知し



ものの滞在時間10分で

舵を秋葉原に取りなおす






15:00






秋葉原





メイド喫茶の巨大組織





「@ホームカフェ」
に一同入店改め帰宅






「みっくすじゅーちゅ」と呼ばれる



薄緑色をした謎の液体を
恐る恐るタイ人営業マンも注文




「♪ふいふり、しゃかしゃか、らぶらぶ、ぐんぐん…
(理解不可能な単語が延々と続くため省略)」







メイド女史とタイ人との
夢の異文化呪文コラボレーション




を行い
やっとグラスに謎の液体が注がれる。








呪文を必死に唱えるタイ人の目を盗み






クソガイ同期が行方を眩ませる。





16:50




秋葉原を出発し
一同日本人大使の出生地







東京は 
南方の下町



京急線沿線 



「立会川」に到着



大使が生家に
帰還のあいさつをしている間





2名のタイ人と
エセジャックスパロウが
立会川を徘徊








うち1名のタイ人が




「おしっこがしたい」
という必死のジェスチャーを仕掛けてくる






見渡す限り

どこか時代から取り残されたような
古き良き昭和の商店街









公衆便所すら見当たらず







観念し駅前交番へ出頭




タイ人2名と
エセジャックスパロウに


親切にトイレの在り処を
案内する立会川巡査部長


一同敬礼






タイ人のエマージェンシーを乗り越え
我々三人に




国境をも超える深い絆が芽生える











17:30




これから名古屋へ

進路を取る三名を



新幹線の発着駅



品川駅にて送迎











「一日後苦労。これは俺からの気持ちだ。受け取ってくれ」











日本人大使から






「SALVATORE FERRAGAMO(サルヴァトーレ フェラガモ)」






と書かれた赤い箱を頂戴する。






今日一日のおもてなし




なんだかんだで大使は

喜んでくれたに違いない





品川駅の喧騒に消える
日本人大使と
2名のタイ人を見送り




ささやかな達成感と喜びに涙腺が緩む











思い思い











フェラガモの箱を開けると





中に入っていたのは
































大使の

タイ語で書かれた
名刺が2枚




















丁重に品川の海へ投げ捨てる。












今回
我々の旅を
最後までサポートしてくれた
立役者




























日産セレナ


改め




ブラックパール号






















日産セレナの名CM



「モノより思い出」



とは



よく言ったもんですね