猪突猛進

先日の3月11日の東日本大地震から







目まぐるしく

日本が
文字通り激震した一週間


皆様は何を思い
どう過ごされましたでしょうか。












私自身
今回の震災にて
様々なことに思いを巡らせ

ブログを二週間ほど自主的に
閉鎖させていただきました。










この状況下
何を語り
何を綴ればいいのか
思いつめながら










就寝し






深い眠りから
はっと目が覚めると






本日

日曜の
午後2時








行き場のない
絶望の淵に立たされました




もう日が暮れるではないですか






人生の中でめぐってくる
日曜日の数には限りがあります









それらをいかに有意義に過ごすかは


人生の豊かさに大きく直結します








もはや残り時間の限られた
この今日という日曜日を
如何に過ごすか













もう
能書きを垂れている
時間の猶予はありません






とりあえず
この厚木の独房からの脱出を試み


夢遊病がごとく


無心に車に乗り込み

北北西に進路をとりました。

















ひたすらひたすらまっすぐに
進路をとり


厚木の奥の奥


駅前の喧騒が嘘のような
田舎道の中
車を走らせていると






1軒の古びた
美術館を発見しました











厚木に美術館






私は特にアートに
明るいわけでもなければ




そういった類のもに
興味があるわけでもありません














ただ

















なぜこんな田園地帯に










美術館が

















なにか
呪いでもかけられたかのように
私はその美術館の中へ吸い込まれました。
























手動と張り紙が貼ってある

自動ドアを手で開け





あたりを見回すと



奥から一人の老婆が現れました









「いらっしゃい」




齢80歳ほどでしょうか
とても華奢な老婆は
客人である私を
笑顔でもてなしてくれました












美術館

といっても
気持ち少々





北海道の網走土産のような
木彫り骨董品が




何個か置いてあるのみ






「ここは温泉旅館なんですよ」
















名誉のため
美術館名は伏せますが






















どう考えたって
美術館としか思えない店名







「お風呂でも入って行ったらいかがですか」









確かに

無心で家を飛び出し

昨晩風呂にも入っていなかった私

















「ではお風呂でも」









「あ、その前に」






老婆は
この旅館に訪れた著名人の説明を始めました






若かりし頃の
小泉今日子の写真と色紙や



若かりし頃の
立川談志師匠の



写真と色紙など











それはそれは
そうそうたる





著名人の写真と


色紙が壁一面に













べったりと貼り付けられていました





その数























木彫り骨董品を

はるかに凌駕していました








「うちのお風呂にはアントニオ猪木さんも、
新沼謙治も入っていいかれたんですよ」










新沼謙治が入った風呂の
価値はよくわかりませんでしたが







「ではその新沼謙治が入ったお風呂にでも」







「あ、その前に」














老婆は



机に置いてある
剥製のイノシシの説明を始めました





なんでも
親戚のよしみで毎月
若いイノシシの肉が
大量に送られてくるそうで






それを鍋にし
客人にもてなすそうな






「島根産イノシシのみそ焼きでもいかがですか」



島根産イノシシの価値は
本当によくわからなかったので







「イノシシは結構です。ではそろそろお風呂に」







「あ、その前に」














老婆は

奥にある大広間の
説明を始めました




なんでも



かの
駒沢大学苫小牧高校野球部が

合宿で使った大広間らしく











「みんないい子でね」



「そうですか、楽天マー君もいらしたんですかね」




はてマー君?お友達」





「いえ違います。ではそろそろお風呂にでも」




「あ、その前に」










老婆は



かの宇宙飛行士

野口聡一
着る








予定だった
宇宙服の




ワッペンを見せてきました。






「これ、あの野口聡一さんが着る予定だった宇宙服のワッペンで」



「でも着てないんですよね」





「そう。野口さんあの時は宇宙船にも乗ってませんからね」



「へえ〜」



「なぜ私がこのワッペン持っているか興味あるでしょう」



「いえ、ありません。そろそろお風呂にでも」




「あ、その前に」



「いえ、そろそろお風呂にでも」





「そうね。そろそろお風呂の時間ね」














風呂に入るまで
1時間弱の攻防を
老婆と繰り広げました。








「これが新沼謙治が入った風呂か」









おそらく新沼謙治
自宅の風呂の方が












大きいんではないか…









という風呂のサイズ






サイズは大きくないものの




絶妙なまでの湯加減










さっとあがり



老婆に一礼し

美術館をあとにしました。







これは
夢か幻
だったのではないか












すぐさま
厚木営業所の
ナイスガイ同期に電話をし



















「厚木の山奥に、疲れた旅人にイノシシをふるまう老婆がいる」









と報告










同期とともに
進路を再び北北西に取り













美術館前に到着






夢でも
幻でもなかったか















しかし
看板もなにも全部消灯







中も薄暗く




手動と張り紙の張られた
自動ドアも開かず










「営業時間は終わってしまったか…」









帰ろうとしたその時







中にランニング姿の
老婆…















ではなく
































おっさんを発見







「あ!すいま…」


















おっさんは
我々を発見すると















そそくさと階段を使い

上の階へ逃げて行きました









「なんなんだあいつは」





















おっさんを呼び出すべく


中に電話をかけると


さっきの老婆が応対






「こんばんは」





「さっき訪れたものですがイノシシを食べに来ました」












「今日はもう板前も全員帰ったんですよ」





「そうですか」











時計を見ると

午後8時前

あ…


さっきの
おっさん
板前か


しかしなぜ逃げた

















「いまドア開けますよ」

「いや大丈夫…」






すると老婆が
物凄いスピードで
玄関にやってきました


「遠いところわざわざすいませんね。イノシシはもう調理できませんがコーヒーでも」




「いや、結構です」








我々は
何を感じたか
そそくさと退散を試みました










「そうですか、今度はぜひ宴会で使ったりしてくださいね」




「わかりました」




「遠いとことほんとにごめんなさいね」




「では…」




「あ、一杯コーヒーでも」


「いや、結構です」









何かの恐怖をすでに察知した
同期はすでに私より2馬身ほど
引いていましたが






「そうですか。会社はいつお休みなの?」



「土日休みです」




「では来週こられますね」





「…はい来週きます」




「ではお電話待ってますね」




「わかりました。では」
























「はい、では一杯の」




「コーヒーは大丈夫です。失礼します。」










我々はそそくさと
美術館を後にし









帰りに
イノシシではなく
ただの焼き肉屋で
ブタを食って帰りました。
































ホルモンだけではない

魅力がいっぱい


それが






















厚木アナザーワールド












ぜひ
皆様も一度
お越しください



































首をかしげて
帰ること請け合いです