観音下の誓い



高崎駅通過時に



新幹線の窓から見える


はるか向こうの山裾に御坐す





真っ白な観音様









おっしゃるそうで




小さい頃


祖父母の実家がある


新潟県を目指す


上越新幹線に乗っている頃から



その存在は気になっておりました。








何十年かの歳月を得て


2021年初



観音様の内部に


潜入調査して参りました。








幾重もの階段で構成されており






その頭部にあたる頂上から



高崎市内全域が見渡せる


抜群のロケーションです







出会いは




観音様の内部ではなく




向かう参道中にありました。











大量のダルマを



これでもかと



並び販売するお土産屋さんが


参道に何軒かあり





高崎がダルマの名産地であることを




否が応でも知ることができる光景









ただその中に一件






他には何もなく






ただ一体の





真っ黄色のダルマを




棚に置いて




外からは



何を生業にしているのか


皆目見当がつかない









謎の古民家








近づいてみると





そのダルマ






下地が黄色で黒のストライプ






体に刻まれたその文字こそ













「優勝祈願 阪神タイガース








まだ私はその頃






ドラキチと虎党の狭間で揺れる





関ヶ原の戦いにおける






小早川秀秋のような去就








しかしこの





愛くるしいダルマを見て




心を結しました。










引き戸を開け入店




「ごめんください、、」





中には



たくさんの絵画と骨董品






ダルマは外の一体のみ








奥から




漫画から飛び出してきたような




ザ偏屈な絵画師の出立ちをした







御仁が登場






「いらっしゃいませ。よく扉を開けられましたね。勇気入りましたでしょう」









その見た目からは大きく乖離した


物腰の柔らかさ





「すいませんが、外の阪神タイガースのダルマは売り物ですか?」







「いえ、ただの飾りもんですが、、阪神ファンの方ですか」





「はい。生粋の虎党です」














よく言ったものだ




横にダンカン師匠がいたら




黄色のメガホンで


どつかれているだろう










「それはそれは、、どうぞ、売り物ではないのでタダで差し上げますよ」









なんてこった



破格の値を覚悟していたが




無料とは、、








「私の知り合いの阪神ファンの方が、作成されましてね。もう何年も置いてるんですが、阪神優勝しませんねぇ」







「いや、、しかしタダだなんて、何か購入させて下さい!」








必死で店内を見渡し



購入できそうなものを探すも
















ない










何を模したかわからない絵画の数々





それら全て


開いた口が塞がらない


破格の値段












この絵画達を購入するのだろうか









私は天心どころか






偽り虎党を演じる





ご乱心







「旦那さん、欲しいものなんかないでしょう」







しまった、



読心されたか、、









「いえ、素晴らしい絵画の数々だなと見入っておりまして」





「野球は好きですか?」





「はい。経験はないですが見るのは好きで」







これには偽りなく



絵画師に通じたか




奥の戸棚から白球を持ち出し




手渡してくれました。









刻まれたそのロゴ














そして


8番の数字とサイン






「現役の時の原さんですかね?」







「ご名答。どうぞ、1000円で。ただ阪神ファンの方に贈るのもどうかと思いますが、それくらいしかなくてすいません」





私はそのサインボールをいただき






御礼を申し上げ店をあとにしました。








とても腰の低い絵画師先生





高崎の相間川温泉という





これまた山奥で




個展をやられているそうで


後日そちらもお邪魔しました。









先日久しぶりにご連絡を





阪神タイガースダルマですが、5個発注お願いします」



購入して


手を合わせ拝み続けていたら



あれよあれよと阪神が首位独走





最近は混戦極めておりますが






今こそこのダルマパワーを



集結させる時






配るべき五人の虎党戦士は、、







夫婦してはっぴ着て
日夜応援している
一宮の会社先輩






2003年優勝時の
選手ごとの応援歌を
未だ空で歌える横浜の会社後輩






阪神タイガースのロゴが入ったブランデー
優勝したその日まで未だ飲めずにいる
滋賀県能登川にある
スナックのマスター





私の営業先
大学の研究室に
阪神タイガースの球団旗を
堂々と掲揚している
信州大学の某教授







最近はもっぱら
YouTubeばかり見ている
我が父









挑む、超える、頂へ







阪神タイガースの優勝を祈願し







観音下の古民家に







5体のダルマを



取りに行ってまいります


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高崎市内を背に一枚